王88~89シーズン
スタートは開幕7連敗。再建は前途多難でした。
ジェリー・レイノルズHCが自信を持っていた【ケニー・スミス、デレック・スミス、ロドニー・マックレイ、ラサール・トンプソン、ジョー・クライン】という開幕スタメンはオフェンスが機能せず、僅か4試合で崩壊。
その後はラインナップ、ローテーションを試行錯誤する状況が続き、昨シーズン並みに負けが込みました。
強豪揃いのパシフィック・ディビジョンではクリッパーズとともに上位5チームから大きく引き離され、2月頭には借金が20個(12勝32敗)。
リーグ全体で見ても、エクスパンションであまりに弱かったヒートを除けば、リーグ最低チームのひとつでした。
そこでビル・ラッセルGMは更なる動きを見せます。
●まず不満分子を放出
2月頭、D・スミスを解雇。
スミスは開幕からスターティングSGとして2桁得点を稼いでいたんですが、次第に失速(これまでの故障の影響かも)。
12月中旬にスタメンを外されると出場機会は激減し、本人はそのことに不満を感じていました。
決定打となったのは1月末にレイノルズHCと揉めて6日間のサスペンションを喰らったこと。
レイノルズが「スミスを解雇しろ、さもなくばコーチを辞める」的にフロントを脅したとも言われたようですが、真偽はグレーゾーンです。
●トレード期限その1
トンプソン&ランディ・ウィットマンをペイサーズに放出して、ウェイマン・ティズデイル&90年のドラフト2順目指名権を獲得。
ティズデイルは6フィート9インチのPF。
リバウンドは少ないですが、器用なサウスポーでオフェンスのバリエーションが豊富。
ペイサーズ時代は6マンも多かったですが、30分弱のプレイングタイムで、平均15点前後をあげていました。
これは低迷していたペイサーズが望んだ動きのようで、タフなリバウンダー(トンプソン)が欲しかったとのこと。
また、このシーズンからリック・スミッツが加入しており、ティズデイルの役割が減少する可能性も考慮したようです。
トンプソンはリバウンド&ブロックだけでなく、キャリアハイの平均15.0点もあげていたんですが、オフェンスはティズデイルの方が上。
ウィットマンも若手にプレイングタイムを奪われていたし、この人はインディアナポリスが地元なので色々良かったかもしれません。
●トレード期限その2
ペイサーズとのトレードの3日後、クライン&エド・ピンクニーをセルティックスに出して、ダニー・エインジ&ブラッド・ローハウスを獲得。
エインジは80年代セルティックスの主力SGで、昨シーズンはオールスターにも出場。
今シーズンは6マン的な起用もされていましたが、過去4シーズンはスターティングGを務めており、84年・86年の優勝に貢献しています。
キングスが欲しかったのは、若手のリーダー、スコアラー、チームの士気を高められるような選手。
気性が荒く、「パブリック・エネミー」なんて呼ばれたりもしますが、「みんな彼のことを嫌いかも知れないけど、リスペクトしている」というレイノルズHCのコメントが、トレードの意味を表しています。
エインジは年齢的にも29歳と良い時期。
このシーズンのセルティックスはラリー・バードが76試合を欠場した年で、Cのロバート・パリッシュも35歳のベテラン。2人の代役&バックアップが欲しかったんですね。
因みにピンクニーは51試合中24試合でスタートし、平均12.4点・5.9リバウンドをマーク。トンプソンと共にインサイドで頑張っていました。
クラインは長男が生まれたのと、このトレードの時期が重なったとか。
ローハウスはロングレンジのシュートが得意な大型Fで、のちにバックスでシューターとして活躍します。
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こうして激しくロスターを入れ替えた結果、キングスは【K・スミス、エインジ、マックレイorベリー、ティズデイル、ジム・ピーターソンorローハウス】とまったく別のチームになりました。
そして、ここから少しだけ調子が上向きます。
エインジ&ティズデイルがキングスのメンバーとしてフル稼働したのは3月・4月なんですが、その2ヶ月は12勝16敗。
2月までが15勝39敗だったので、短期的にはかなりの改善と言えるのではないかと。
サンズ、ジャズといった強豪を下すなど内容的にも進歩が見られました☆
そんなワケで最終成績は27勝55敗。
ライバル、クリッパーズを引き離し(21勝61敗)、カンファレンス10位でシーズンを終えました。
キングスの武器は3P。3Pに限ればリーグトップクラスで、成功数・試投数・成功率すべてリーグ2位でした。
K・スミス、プレスリー、ベリー、エインジとシュートの上手い選手が揃っただけのことはあります。
【シーズン通してがんばりました】
2年目のK・スミスは81試合すべてでスターターを務め、平均17.3点・7.7アシスト・1.3スティール。
今年は故障もなく、平均で40分近くもプレイ。レイノルズは、そのプレイ内容にフラストレーションを感じることもあったようですが、数字を見る限りは成長が見てとれます。
マックレイ&ピーターソンの元ロケッツ組もまずまず。
マックレイは68試合(65試合がスターター)で平均12.6点・7.6リバウンド・4.3アシストとオールラウンドにプレイ。
トリプルダブル2回も◎です。
ピーターソンは66試合(40試合がスターター)も平均10.2点・6.3リバウンドでした。
PFだったりCだったりベンチだったり…いろんな起用をされましたが、トレードでビッグマンが3人もいなくなったので、後半戦は貴重なインサイド・プレイヤーだったかと思います。
ルーキーのデルネグロは80試合に出場。
シーズン通してG陣のバックアップを務め、平均7.1点をマーク。3Pは少なかったけど、FGもFTも正確でした。
【期待の若手シューターたち】
ルーキーのベリーは意外と掘り出し物。
年末からD・スミスの出場機会を奪うように台頭。なかなかのシューターで、オールスターブレイク前にはベンチスタートながら得点源の一角になりました。
オールスターブレイク後は故障とエインジ加入で一時期トーンダウンしますが、直後にマックレイが負傷して今度はスターターへ。
最終的には64試合で平均11.0点でしたが、11試合すべてでスターターを務めた4月は平均18.3点をマークしています。
2月頭のウォリアーズ戦では14本中7本の3Pを含む34点、エイプリルフールのジャズ戦では10本中6本の3Pを含む33点をあげるなど、当たると見事。
3P成功率40.6%はリーグ7位です。
3年目のハロルド・プレスリーは平均12.3点・6.1リバウンド・1.2スティール・1.0ブロック・3P成功率40.3%(リーグ8位)。
3Pの向上がめざましく、295本中119本の3Pを決めているんですが、試投数・成功数ともにリーグのトップ5に入りました。
【新加入組は良い感じ?】
エインジ&ティズデイルは、キングス加入後は中心選手に。
エインジは28試合で平均20.3点・6.7アシスト・3P成功率38.7%、ティズデイルは31試合で平均19.8点・9.6リバウンドと共にキャリアハイを更新☆
因みにエインジは、移籍4戦目でこれまたキャリアハイの45点をもあげています。
エインジは、元々トレードの噂があったようなんですが、キングス行きは想定外で、当初はトレードにショックを受けたようでした。
しかし、すぐ気持ちを切り替え、シーズン終盤に調子をあげたチームに手応えも感じた様子。
K・スミスとのバックコートは、レイノルズHCが気に入っていたようです。
因みにエインジは7番を着用するんですが(ピート・マラビッチに肖ったとか?)、これは第4希望。
第1希望の22はマックレイが着用しており、第2希望の44は永久欠番で、第3希望の23はティズデイルが着用していました。
エインジはセルティックスの一員として最後の試合がキングス戦だったため、ティズデイルが加入したばかりのキングスと対戦しています。
ローハウスは、トレード直後はエインジのおまけらしく出場機会も控えめでしたが、マックレイの離脱でプレイングタイムが増加。
最後10試合はピーターソンに代わってスターターとして起用されました。
29試合で平均8.0点はまずまず。キングスへの移籍は+だったかなと。
【ベンチの端っこ】
マイケル・ジャクソンは年末に解雇されるも、2月頭に10日間契約で復活。
復活できたのはD・スミスがクビになったお陰と思われます。
3月頭には同じく10日間契約でランディ・アレンを獲得。
この人はこれがNBAデビューのスウィングマンで、かつてはフロリダ州立大で4年間スターターを務めたんですが、NBAのチームからはドラフトされず(87年)、CBAやヨーロッパなどでプレイしていました。
ベン・ギレリーは一応24試合で起用されました。10分以上プレイした試合は1試合もありませんでしたが。
因みに昨シーズン終盤に左膝の手術を受けたジャワン・オールドハムはシーズンを全休しました。
当初はこのシーズン半ば(89年1月頃)復帰予定とも言われたようですが、上手くいかなかったようです。
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ラッセルGMの激しい人事によって新たなチームになりました。
途中加入のエインジは、フライトにチームメイトが揃っていないことがある、練習への集まりが遅い(セルティックスでは練習の30~1時間前にはみんな揃っていた)、などプレイ以前の問題点を指摘。たぶん今までは、こういうことを言える人がいませんでした。
シーズン中にはレイノルズHCと、今度は3年の延長契約も結んでおり、少しずつ良い方向に向かっていくかも知れません。が…
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【余談2つ】
①このシーズンから新しいアルコ・アリーナに移っており、収容人数は旧アルコ・アリーナを上回る16157人。
依然として地元人気は高く、ホーム戦はずっと満員でした。
因みにアリーナの雰囲気(ファンの熱気?)は旧アルコ・アリーナの方がすごかったようです。
②シーズン途中の12月、レイノルズのACとしてハーマン・カルが加入しました。
この人はNBAでのキャリアはACのみ。これまでにスタン・アルベック、ジョージ・カールらのスタッフに入っていました。
③年末に行われたブレイザーズ戦終盤、レイノルズHCが意識を失って突然倒れるという出来事がありました。
レイノルズは数分間意識を失ったみたいなんですが、検査の結果、原因はストレスと食生活のまずさだったようで、10日ほど休養して年明けには無事戻ってきました。
レイノルズはこの当時40代半ば。レイノルズ不在中は、新任のカルが指揮を執っています。