帆84年オフ
84年5月15日、ドナルド・スターリングは、チームをサンディエゴからロサンゼルスへ移転。
これによってロサンゼルス・クリッパーズとなりました。
以前から移転を試みるもリーグの承認を得られなかったスターリングにとって、一念発起するきっかけとなったのが、NFL:レイダースの移転。
オークランドからロサンゼルスへ移転を試みたレイダースは、当初それを認められないんですが、アンチトラスト法違反として裁判に持ち込んで勝訴、移転に成功したのでした。
レイダースのオーナー、アル・ディビスはスターリングの友人で、それに触発された模様。
なんとNBAに無許可で移転を決めてしまいました。
冒頭の日付は、クリッパーズが、ロサンゼルスのダウンタウンにある、ロサンゼルス・メモリアル・スポーツ・アリーナとリース契約を結んだ日です。
(このアリーナは、レイカーズ、ABAのスターズも本拠地としていたことがあります)
球団社長のアラン・ローゼンベルグは、サンディエゴ・スポーツ・アリーナともレイカーズとも問題はなく、リーグのオフィシャルと会っても、特に反対は受けなかったとしました。
リーグの反応については、レイダースの件が影響しているだろうと見解を示しています。
しかし、NBAはすぐに訴訟を提起。
NBAの法務部長(general counsel)のラス・グラニク曰く、リーグの訴えは、リーグが2つの重要な権利を持っていることを連邦裁判所に確約して欲しいというもの。
①フランチャイズの移転を許可するか否かの決める力
②リーグのルール(フランチャイズ移転には既存のチームによる多数決での承認が必要)に勝手に違反したフランチャイズを処罰する(終わらせる)力
また、グラニクは、この訴えに加え、クリッパーズの勝手な移転によってリーグが大きな被害を受けたとして25ミリオンの支払いを求めました(罰金)。
ロサンゼルスには既にレイカーズがいるため、ビジネス面でのマイナスが大きいというニュアンスでしょうか。
しかし、スターリングはこれに対して、リーグ相手に100ミリオンの反対訴訟を提起。
これを受けてリーグは罰金を6ミリオンに減額し、スターリングも訴えを取り下げ、とりあえず事態は収束しました。
グラニクは、こうしたやりとりの間、クリッパーズがロサンゼルスで84~85シーズンをプレイする前提でスケジュールを組んでいたようですが、当初の訴えが通った場合、クリッパーズは最悪消滅する可能性もあったようです。
因みに、移転を発表した際、クリッパーズはその理由を、サンディエゴ・スポーツ・アリーナのメンテナンス&コンディションの悪さとしており、これについては法的にも同意が得られました。
【ドラフト】
・1巡目第8位でランカスター・ゴードン、14位でマイケル・ケイジを指名。
・ジェローム・ホワイトヘッドをウォリアーズに出して、ドラフト2巡目第31位で指名されたジェイ・マーフィーを獲得。
ゴードンはルイビル大出身のSG。
シュートが上手く、得点力はありますが、6フィート3インチ・185ポンドとだいぶ小柄です。
オープン・コート向きの選手なので(と思う)ノーム・ニクソンと合うと考えたんですかね。
ケイジはサンディエゴ州立大出身のPF(6フィート9インチ)。
タフなビッグマンで、カレッジ時代は24点・12リバウンドを上回るアベレージでチームをリードしていました。
シュートエリアは狭いですが、SFにもマッチアップできそうなくらい動けます。
マーフィーはボストン・カレッジ出身のPF(6フィート9インチ)。
因みに、このドラフト時点では移転が承認されておらず(ドラフト後に特別調査委員会があったとか)、コミッショナーのデビッド・スターンは選手の名前を読み上げるときにチーム名を言うんですが、「the Clippers」としていました。
【契約話】
制限付きFAだったデレック・スミスがナゲッツのオファー・シートにサインしますが、クリッパーズはこれにすぐマッチ。引き留めました。
ルーキーのケイジは、8月半ば、来るシーズンをイタリアでプレイするとコメント。
しかし、1週間ほどで前言撤回し、クリッパーズとサインしました。
ただ、このとき「ケイジは一旦イタリアのチームとサインまでしたものの、その後で問題が生じてクリッパーズを選んだ」という話があり、結果的にクリッパーズはイタリアのチームに訴えられてしまいます。
【トレード2件】
①85年のドラフト3巡目指名権をブレッツに出して、ブライアン・ウォーリックを獲得。
②テリー・カミングス&リッキー・ピアース&クレイグ・ホッジスをバックスに放出。
見返りにマーカス・ジョンソン&ジュニアー・ブリッジマン&ハーベイ・キャッチングス&金銭を獲得。
①はトレーニング・キャンプ直前、②は開始直後に行われました。
ウォーリックはキャリア2年のPG。
ルーキーイヤーはまずまずでしたが、昨シーズンは出番を失っていました。
ジョンソンは6フィート7インチのSF。
バックスにいた7シーズンのうち、5シーズンの得点アベレージは20点以上。
オールスターやオールNBAチームにも選ばれており、この当時、リーグ有数のSFでした。
ブリッジマンもバックス一筋(こちらは9シーズン)だったスウィングマン。
優秀な6マンで、8シーズン連続で平均2桁得点をマークしていました。
キャッチングスは6フィート9インチのショットブロッカー。オフェンスはあまり期待できません。
キャリア10年のベテランです。
バックスは昨シーズン50勝しており、中心選手のジョンソンを出したこのトレードは、第三者からみてもサプライズだったとか。
ジョンソン自身も当初はショックを受けたようです。
これは、結果的にクリッパーズが損をした取引なんですが、フロントはカミングスが不整脈を患っていたことを気にしていたようで、また、ピアースもブレイク前。
ホッジスもまだシューターとして開眼する前でした。
【ビル・ウォルトン】
移転を悔やんだひとりが、サンディエゴで生まれ育ったウォルトン。
サンディエゴでの5シーズンのうち、2シーズンを全休し、最初の4シーズンで計47試合しか出場できないなど、チームの力になれなかったことを、のちに「人生で、プロとして最大の失敗だ」としています。
ただ、スターリングがチームを持つようになってから、「金>バスケ」になったという趣旨の批判も。
「バスケは酷く、ビジネス面はモラルがなかった」とのことです。
そんなウォルトンは、トレーニング・キャンプ開始直後の10月頭、再契約を結んでいます。