帆87年オフ
オフに入ってすぐ、フロントはドン・チェイニーを解任しました。
昨シーズンの不振は不運な部分もある気がしますが、あれだけ負けたら仕方ないですかね。
【トラブル復活】
チェイニー解任とほぼ同じタイミングで問題が発生。
87年4月21日、サンフランシスコの連邦裁判所が、NBAのクリッパーズに対する訴訟を復活させるとしました。
84年夏、クリッパーズがNBAの許可を得ずに移転した際、NBAはクリッパーズを訴えましたが、サンディエゴの連邦地裁は、「NBAは移転を禁じようとしなかった、罰金を課したかっただけ」としてNBAの訴えを棄却していました。
棄却の根拠は、NFLとレイダースの件に関する判決(NFLが移転をブロックするのはアンチトラスト法違反であるというやつ)。
しかし、3年のときが経ち、サンフランシスコの連邦裁判所は、「クリッパーズのケースとレイダースのケースは違う」「NBAがクリッパーズの移転を制限していたのは正当だった(アンチトラスト法違反ではない)」として、訴訟棄却を審理に差し戻すとしたんですね。
つづく
【そんな中、おかえりなさい】
新HCにジーン・シューを呼び戻しました(ACはドン・ケイシーのまま)。
サンディエゴ時代の78~80年に指揮を執りましたが、当時のオーナー、アーブ・レビンと揉めて辞任。
その後、ブレッツのHCを6シーズン務め、昨シーズンはシクサーズのTV解説をしていました。
この当時、通算勝利数4位のベテランHC(トップ3はレッド・アワーバック、ジャック・ラムジー、ディック・モッタ)。
通算勝率は5割を切っていますが、弱いチームを立て直す手腕に定評があり、過去、ポストシーズンに導けなかったのは前回指揮を執ったときのクリッパーズでだけです。
82年には2度目のコーチ・オブ・ザ・イヤーも受賞しています。
因みにその他の候補は、ヒュービー・ブラウン、ジョン・マクロード、コットン・フィッシモンズ、モッタら。
当初は、ブラウンかマクロード狙いだったようです。
【ドラフト①】
この当時のロッタリー制は、「プレイオフに出られなかったチームでくじ引きをして1~3位の順位を決め、その後に残ったチームが4位から勝率の悪かった順に並ぶ」というもの。
くじ引きは確率変動制ではなかったので、僅か12勝でもさほど恵まれた条件にならないんですね。
というわけで、1巡目では第4位でレジー・ウィリアムス、13位でジョー・ウルフ、19位でケン・ノーマンを指名。
また、2巡目第38位ではノリス・コールマン、6巡目第116位ではマーティン・ネッスリーを指名しました。
ウィリアムスは、ジョージタウン大出身のスウィングマンで、84年に同大が優勝したときのメンバー。
ダンバー・ハイスクールでマグジー・ボーグス、レジー・ルイスらとチームメイトだったのは有名でしょうか。
同大のジョン・トンプソンは、パトリック・ユーイングが抜けた86~87シーズンのチームを「レジー&ミラクルズ」と呼び、当時プロビデンス大のHCだったリック・ピティーノも「彼は何でもできる」と高評価。
エルジン・ベイラーが「ビッグガードとSFをこなせるので、2人の選手を獲得したように感じている」と言えば、ドナルド・スターリングは比較対象としてマイケル・ジョーダンの名前を出すなど、期待は大きいです。
【ドラフト②】
昨シーズン、ロケッツからもらった指名権で獲ったのが、ノースカロライナ大出身のウルフ。
6フィート11インチのビッグマンながらシュートが上手く、4年次にはなんと3P成功率で5割越え(23/40)。
身体能力は低いですが、インサイドでもアウトサイドでも柔軟にプレイできます。
ノーマンは、ピストンズからもらった指名権で獲得したイリノイ大出身のSF。
アウトサイドは苦手ですがパワーがあり、ドライブやポストプレイ、速攻のフィニッシャーとして得点を稼ぎます。
コールマンはカンザス州立大出身のF。
カレッジ時代はスターティングPFでしたが、サイズがちょっと小さいです(6フィート8インチ)。
ミッチ・リッチモンドとチームメイトでした。
ネッスリーはデューク大出身の7フッター(7フィート2インチ)。
カレッジでは活躍の場がなく、4年次でも平均11分ほどしかプレイしていませんでした。
【つづき】
8月頭、NBAのクリッパーズに対する(復活した)訴訟の公判が10月6日とされました。
デビッド・スターンは、3年前のクリッパーズの勝手な移転について「リーグは未だに怒っている」とコメント。
裁判には、まず「NBAのようなリーグが、フランチャイズ移転を検討する権利を持っているか」の決定を求め、その権利を得られた場合、「クリッパーズのサンディエゴ復帰、もしくはクリッパーズの消滅、売却の可能性、または現金での解決(移転に伴う損害賠償ですかね)のいずれかが期待される」としました。
この件、お互いに裁判での解決を望んでいる、という見方もあったみたいですが、スターンとドナルド・スターリングの交渉の末、裁判前の9月30日に和解が成立。
クリッパーズはNBAに約570万ドルを支払うことになりました。
当初、NBAは「強制的にフランチャイズをサンディエゴに戻すか、2500万ドルの支払い」を求めていたようで、どういった経緯でこの和解案に至ったのかはわかりません。
この和解は、NBA理事会の投票をもって最終決定。
投票結果によっては話が複雑になる可能性もあったみたいですが、すんなり収まったんですかね。
ともあれ、チーム消滅、移転取消など面倒な事態は免れました。
【契約の話】
このオフ、戦力面でのポイントはマイケル・ケイジ(FA)の去就でした。
クリッパーズとしては、3年前、ケイジのイタリア行きの件で、あっちのクラブチームから訴えられた件が、この夏(7月末)にやっと片付いたんですが、今度は契約交渉がまとまりません。
交渉は長引き、開幕にも間に合わないんですね。
フロントは、恐らくケイジ不在を想定して、10月頭にトッド・マーフィーと契約。
マーフィーは6フィート9インチのビッグマン。
カリフォルニア大アーバイン校出身。
昨年のドラフト3巡目でソニックスから指名されますが、開幕ロスターには残れず、イタリア・リーグへ。
ところがすぐに膝を負傷してしまい、帰国して母校のACを務めていました。
因みに、1巡目指名ルーキーたちとの契約にも時間がかかり、いちばん早かったノーマンでも10月1日。
ウルフは10月半ば、ウィリアムスは開幕近くなってようやく契約を結びました。
ウィリアムスの契約は、フロント曰く、ビッグマンではない選手としてはかなり大きなもの。
これを上回るのはパトリック・ユーイング、アキーム・オラジュワンなどごく一部のスターのみとのことでした。
【開幕2日前にもうひとつ】
左膝の怪我から2シーズン振りの復帰を目指していたノーム・ニクソンが、今度は練習中にアキレス腱を切ってしまいます。
これにより、2シーズン連続のシーズン全休が決まりました。