熊創設
93年2月、アーサー・グリフィスというカナダのビジネスマンが「NBAチームを作りたい」とアナウンス。
グリフィスはNHLのバンクーバー・カナックスのオーナーで、ダウンタウンにカナックスのためのアリーナ(ゼネラル・モータース・プレイス)を開発中。
95~96シーズンからの使用を目指しており、ここを本拠地としたNBAチームも持ってしまおうというワケです。
グリフィスはリーグへの加盟金として1億2,500万ドルを用意。
94年4月27日にはリーグの理事会で正式に承認を得られ、29番目のチームとしてバンクーバー・グリズリーズが誕生しました。
チーム名は当初「バンクーバー・マウンティーズ」という名前でしたが、地元警察と名前が被るという理由で変更になりました。
95年1月1日までに12,500枚のシーズンチケットを販売しなけらばならない、などの関門をクリアし(10日前の時点では10,000枚ほどしか売れていなかったとか)、95~96シーズンからの参入も無事に確定。
95年3月頭には、グリフィスはジョン・マッカウJrというシアトルのビジネスマンと協力して、カナックス、グリズリーズ、新アリーナを統括する『ノースウェスト・エンターテインメント・グループ』という会社を設立しました。
これは、新アリーナの建設に費用がかかりすぎたのが理由の模様。
新会社は同年8月に、オルカ・ベイ・スポーツ&エンターテインメントと名前を変えます(オルカとはシャチのこと)。
【フロント】
94年7月、ステュ・ジャクソンが初代GMに就任。
ジャクソンは元々コーチで、直近ではウィスコンシン大のHCを務めていました。
NBAではニックスのHCを1シーズンと15試合だけやったことがあります。GMは今回が初です。
因みに、正式な役職はバイスプレジデント兼GMなので、人事以外にチケット関連、ユニフォームのデザイン、地域との関わりなど、仕事は多岐に渡ります。
ジャクソンはスカウトに、バックスのスカウトだったラリー・ライリーを招聘。
また、95年5月末にはケビン・プリチャードと契約を結びました。最初のFA契約選手です。
プリチャードは27歳のPG。
90年のドラフト2巡目でウォリアーズ入りし、その後、NBA、海外リーグ、CBAを渡り歩いていました。
プリチャードは「これはたぶん最高の機会だ」と喜び、この時点では、ジャクソンはプリチャードをスターターとして考えていたようです。
【HC】
ドラフトの一週間ほど前、初代HCはブライアン・ウィンタースに決まりました。6月19日
ウィンタースはこれがHCデビューの43歳。
選手としてはバックスの永久欠番になるほどで、引退後はプリンストン大のACを経て、86~87シーズンにキャブスのACに就任。
そこから9シーズン、キャブスとホークスでレニー・ウィルケンスのACを務めました。
今回は3年契約です。
ACにはライオネル・ホリンズ、レックス・ヒューズ、ジミー・パウエルが就任。
ホリンズは88年から昨シーズンまでサンズで、ヒューズはこれまでにキングスとスパーズで計3シーズン、それぞれACを務めた経験があります(ヒューズはうち2シーズンで暫定HCも)。
パウエルはこれが初めてです。
【エクスパンション・ドラフト】
ラプターズとコインフリップを行い、勝ったグリズリーズは通常のドラフトでの高順位を選択。
よって奇数順位がラプターズ、偶数順位がグリズリーズとなりました。
・グレッグ・アンソニー(ニックス)
・ロドニー・デント(マジック)…デントを指名する代わりに将来のドラフト2巡目指名権を放出。
・アントニオ・ハーベイ(レイカーズ)
・レジー・スレイター(ナゲッツ)
・トレバー・ラフィン(サンズ)
・デリック・フェルプス(キングス)
・ラリー・スチュアート(ブレッツ)
・ケニー・ギャティソン(ホーネッツ)
・バイロン・スコット(ペイサーズ)
・ジェラルド・ウィルキンス(キャブス)
・ベノイト・ベンジャミン(ネッツ)
・ダグ・エドワーズ(ホークス)
・ブルー・エドワーズ(ジャズ)
上位では主に若手、下位では主に実績のあるベテランを指名しました。
デントは去年のドラフトでマジック入りしたんですが、昨シーズンは1試合もプレイせず、グリズリーズでも(というよりNBAで)プレイしません。
その他、スレイター、ラフィン、フェルプスも残りません。
【初ドラフト】
1巡目第6位でブライアント・リーブス、2巡目第36位でローレンス・モーテンを指名。
リーブスはオクラホマ州立大出身のC。
7フィート・275ポンドの巨体ながらシュートタッチが柔らかく、オフェンスのバリエーションは豊富。
4年次にはチームがファイナル4まで進む原動力となりました。
ニックネームの「ビッグ・カントリー」は、1年生のときにバイロン・ヒューストンが名付けたそうです。
身体能力に欠けるためか、ドラフト時にはブロックショットが弱点とされていました。
モーテンはシラキュース大出身のスウィングマン。
6フィート5インチ・185ポンドと細身のスコアラーで、4年間の通算得点は、同大だけでなく、所属カンファレンス史上一位でした。
プレイスタイルはオープンコート向きかな。ハイソックスがトレードマークです。
因みに、グリズリーズ&ラプターズには下記のような制限がありました。
・ロッタリーに勝ったとしても、両チームともトップ5はダメ。
【マイナーな方々】
・アシュラフ・アマヤ、リッチ・マニング、クリス・キングと契約。
・開幕直前、プリチャード&スチュアートをマジックに出して、アンソニー・エイベントを獲得。
・開幕当日にダリック・マーティンと契約。
アマヤは6フィート8インチ・230ポンドのPFで、サザン・イリノイ大を93年に卒業。
ドラフトにかからず、CBAやギリシャでプレイしていました。
マニングはワシントン大を93年に卒業したビッグマン(6フィート11インチ)。
こちらはホークスからドラフト2巡目で指名されましたがロスターには残れず、CBAでプレイしていました。
故に2人ともルーキーです。
キングは26歳のSF。
93~94シーズンに15試合だけソニックスでプレイしており、昨シーズンはギリシャにいました。
エイベントはキャリア3年のPF。
これまでにバックスとマジックでプレイしており、ともにPFの層が薄かったためか、実績の割には出場機会に恵まれていました。
マーティンは昨シーズン終盤に10日間契約でウルブズに入った、NBAキャリア半年のPG。
開幕2日前にウルブズをクビになっていました。
【開幕直前】
ジャクソンがプレジデント兼GMとなりました。
これによってジャクソンは、グリズリーズだけでなく、オルカ・ベイ・スポーツ&エンターテインメント全体に関わります(合ってるかな)。
ジャクソンは人事を行うに当たって「人柄」を重視。
目先の勝利ではなく、ケミストリーに重きを置いて選手たちを集めました。
「時間をかけて努力すれば“勝利”の部分は自ずと上手くいくだろう」という読みのようで、ドラフトの際には経歴調査や心理テストを実施しています。